三島由紀夫 著「春の雪」(豊饒の海 第一巻)より~
脚本・演出/生田大和
2012年10月~11月にバウ・日本青年館で上演された作品です。
三島由紀夫の長編小説「豊饒の海」四部作の第一巻「春の雪」をミュージカル化。
美しく矜り高き青年の禁断の恋により、その胸の内に抱く理想と己の力及ばぬ現実の狭間で揺れた末に真実の愛を見出していく姿を情感豊に描く
松枝侯爵家の嫡男・清顕(明日海)は、自らの家系に欠ける貴族的優雅に憧れた父の意向により公卿の家柄である綾倉伯爵家に預けられて育った。綾倉家には清顕より二歳年長の令嬢・聡子(咲妃)がおり、幼き頃より日々を共にした二人は次第に特別な存在として互いを意識するようになっていく。聡子の清顕への想いは、いつしか恋心へと変わっていった。一方、美しく矜り高き青年へと成長した清顕は、その自尊心の強さゆえに自らの気持ちに素直になることが出来ず、艶やかで才長けた聡子に対し複雑な感情を抱いていた…。
松枝清顕 明日海 りお 月組準トップ
綾倉聡子 咲妃 みゆ バウ初主演
本多繁邦 珠城 りょう
飯沼茂之 宇月 颯
洞院宮治典 鳳月 杏
蓼科 美穂 圭子
少年清顕/房子 海乃 美月
◇◇◇
明日海りお 松枝清顕
憧れ・怒り・恋心
権力・保身・プライド・破滅
清顕そのものになっていました。
「幼馴染」から、「気になる異性」となったのに気がつかないで、自分の心が揺さぶられるのを人が悪いみたいにするのは、すごい発想。
行き場のない恋を、自分たちだけの純粋な恋として陶酔。
お家騒動にまで発展してしまうが、聡子への思いは変わらず。
出家した聡子が、自分の事を待っていてくれてると思い、会いにいく。
自分勝手なようで、幼少期から聡子ひとりしか愛さなかった。愛を貫いた。
美穂 圭子 蓼科
咲妃みゆのお世話係
聡子を立派なお嬢様に育てるため献身的に仕える。
聡子が道を外してしまった責任を感じ、自害を図るが失敗。その時、真相を書いた書面で、全てが明るみになる。
貫禄のある演技、落ち着いた空気と着物での歩き方が素敵、さすがです。
咲妃みゆ 綾倉聡子
清顕より2歳上で、おねえさんっぽく振舞っているけど、清顕が気になる。
お手紙・電話、嬉しいけど、表だって嬉しいとは言えない。
一度決めたことは曲げない、芯の強い女性。
和装での所作が美しい。沢山練習したのがわかります。
宇月颯 飯沼茂之
松枝家にいる書生
清顕の使いによく呼ばれる。
飯沼(宇月颯)とみね(使用人・晴音 アキ)の関係も重要
珠城りょう 本多繁邦
裁判官の息子
清顕の友人で、何かに付け清顕を助ける
歌の安定感と体の大きさ、頼もしい。
恋焦がれる場面で見てるほうが照れくさくなるのは何故でしょう。。
清顕(明日海りお)と清顕の友人本多(玉城りょう)ハグするシーン、たまきちの逞しさが倍増。
鳳月杏 洞院宮治典
宮家の跡取り
気品あふれる佇まい
オペラ鑑賞の場面で聡子に一目惚れ
海乃美月
松枝清顕(明日海りお)の子供時代と本多繁邦(玉城りょう)が慕う房子の2役。可愛らしさと色っぽさ、ちゃんと出てました。
ーー聡子(咲妃みゆ)ーー
幼い頃から一緒にいた清顕と結ばれるまで
すれ違い・駆け引き、意地の張り合い
「家」の存続のために生きていくという
当時の女性の立場も複雑に絡んでいます。
宮家に嫁ぐことが決まってから
ようやく本心に気がつく。
世間からは認められない恋
自分たちの歩いている道は「桟橋」
進んでいけばいずれ海に・・・。
ーー☆ーー
どんな夢にも「永遠」はございません
いつか必ず「終わり」が参ります
そのとき私は未練など見せないつもりです。
もしも「永遠」があるとすれば、それは「今」なのです
「今」を紡いで永遠にする
それだけできっと生きていける
ーー☆ーー
この後、出家する聡子
「きらめく思い出と懐かしい日々を抱いて私は箱の中で眠ろう」
落とした髪を箱にしまう。
何度も会いに来た清顕とは、決して会うことはしなかった。
砂
湧き上がる感情
取り巻く環境の変化
そういったものを「砂」として
「滴る」「落ちる」
と表現されています。
◇◇◇
男役さんの「色気」でドキドキ・ハクハクするというより
しっかりとしたお芝居で、心が動かされる作品です。
本日もお越しくださりありがとうございます。